ここにはかべもうすいまくもありません
山本雅代

叩いて

柿の実の ポト ポ ト
落ちている ト なり。
毒虫のついた枝葉。
鋏で ちょきん

私の毒虫叩いて。

断崖の見晴らし。
血の ポト ポ ト。
私の這う姿が


となりでねむっているみたい。

かべもなくうすいまくもありません
ちかづいていくときはなたれて
いく
おとこというおとこ
わたしのとなりでねむっているみたい
(どくむし)
ぽと ぽ と。


舌の奥痺れる。
柿、
眠りについている毒虫 の
集まっていたものが
散らばり 溶けて 浸入し
やがて実となり
虫となる。

妊娠線を這う 虫。
ちくちく縫った跡を。
私は毒虫の 子供。

うひゃうひゃと笑う、子供たちの遊び場はどこかに消えてしまい、父親がやってくると 危ないから と子供たちを遠ざけて

の木や枝についた虫を鋏で切り落としていくと、虫が下に落ちてきて こいつら と父親は言いますが、子供であった頃のわたしは、その虫をそれはそれはじくりと観察したものです

毒虫
の笑う顔ときたら。


自由詩 ここにはかべもうすいまくもありません Copyright 山本雅代 2005-12-20 18:54:48
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