愛の不毛(鯖の味噌煮)
ZUZU

きみはきみんちの猫が
病気なので
結婚式には来られないと
朝メールしてきた
安物のハンガーみたく
燕尾服を着たぼくは
そうかいそりゃ大変だ
いいよケッコンなんてまたにしようって
ニコニコ絵文字でそう言った
親戚一同には
折り合いの悪い父親が謝って回った
数少ない友達というよりも
友達なんてひとりもいないので
知り合いのみなさんは
ぼくのことをえらく気遣ってくれて
申し訳なくおもった
母さんは泣いていたのかもしれない
どうにも顔を見られなかった
頭の毛も薄くなったと
トイレの鏡でそう思った
海のお魚もにんげんが食べ過ぎて
信じられないことに
もうすぐ天然のお魚など
食卓にのぼることはなくなるらしい
丘の女の子も
みな誰かの網にかかったのだろう
ぼくの網は底が抜けているのだろう
しかたがないさ
ぼくの気の弱さやおもいやりなど
ずるさや卑怯さの
形の違う表れでしかないのだ
それをよく知っている
だけど、それがどうしたというのだ
きみはずるくはないのか
だれだってずるいのだ
だれもおもいやりなど持ってはいない
ぼくだけじゃない
ぼくの好物は鯖の味噌煮にすぎない
それをだれが辱しめられるだろう
教えておくれ
もし死刑囚が死に値するかどうかを
投票された市長が決めるというのなら
ぼくの愛の不毛を
だれが定規で測れるだろう
だれにもわからない
だれもだれを救うこともできない
きみのうちの猫は
元気になれるだろうか
どうかきみを悲しませたりしませんように
冬の寒さで
きみの手が凍えたりしませんように
うそのない願いが
ただそれだけであれば
ぼくもすこしは影ある男であれることだろう







自由詩 愛の不毛(鯖の味噌煮) Copyright ZUZU 2005-12-14 21:34:09
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