靴下の夜に
nm6

こんな気がする。


書きつけるぼくらの身の上は怠惰で、
ありふれた人に、靴下の夜に、
まるい、まるい気持ちを。


   ぼくには、いざというときはないからだ。
   とるにたらぬこという人にだ。
   人にだ。いうこと人にだ。





セイ、カンペキナセカイ。味がある茶色の小さな箱の中の、四本足の小さな箱の中で赤く光るぼくらの怠惰の、靴下の夜に。それならば死ねばいいと思っている。自分のまわりで起こっている。もうセイ。一番健全なのがこれだ。そうでないと思うのはどういう本能なのか。不条理だとカミュはいう。ぼくらはプレゼントをまわす。セイ。まるい月の夜に、気持ちがまるい夜に、3000円以内でまわす。どんな状況も距離のことだ。つい最近読んだ本だ。昨日出会った人のことだ。セイ。この瞬間も大切なものがこわれている。


文体はひとつに定めなければならない。
夕方は毎日いろが違う。





ありふれた人に。電車の中でありふれた人に。ホームにつばを吐くありふれた人に。ホームで倒れている人を風景のようにやり過ごすありふれた人に。ホームで、ぼくらは帰る場所へ向かう。ゴー・ホーム。ぼくらは引き下がっては、いつものようにでかけてゆく。明日は帰らない。ホーム。アナウンスが鳴る「3番線の電車は、」が主語だ。ありふれた人は走る鉄のかたまりに集合して散る。はなればなれの、いつかわかれた、あの人の。ゴー・ホーム。集合して散る。





隣に座った3人組は終始男女関係のことを話している。それならば死ねばいいと思っている。夕方は毎日いろが違う。ようだけれど忘れた。ぼくはもうぼくはもう忘れた。だからどんな小さなプロダクトにも、想像を。想像を、靴下の夜に。まるい気持ちを。言い訳だってわかってる。矛盾だらけなのは最初からだ。だから誰か、記しておかなければ。夕方は毎日いろが違う。味がある茶色の小さな箱の中の、四本足の小さな箱の中で赤く光るぼくらの怠惰の、の、靴下の夜に。ありふれた人に。気取るつもりはないのだけれど、月。


自由詩 靴下の夜に Copyright nm6 2005-12-12 17:45:24
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