明日の僕が
近藤正人

雨が降った夜だった
寒くて寒くて膝が痛む夜だった
僕は濡れたアスファルトの上をてくてくと歩いて
なんだか空気が清廉だと思って

僕はまだ見ぬ誰かを思った
温かいシルクの毛布にくるまった誰かを思った
僕は立ち止まってぼんやりと誰かの駐車場を見て
綺麗な形の車を綺麗だと思って

僕はまた歩き始めるかもしれない
まだ見ぬ誰かが朝になれば目覚めるかもしれないように
僕は火事で死んじゃった友人を思い出して微笑んだ
僕が微笑んでいるのを見ても友人は怒らないだろう
僕が友人を思い出して喜んでいることを知れば

明日の朝はきっと晴れて
雨が綺麗に空気を洗い流して
きっと僕のベランダから見える稜線が綺麗だろう

明日の僕が
例えばずーっと昔にあわなくなってしまった友人を思い出し
綺麗な稜線を見て綺麗だと思い
そうして僕の明日は幸せだろう

僕は試しに一歩踏み出して
あの頃友人と聞いた安っぽいロックを夜の町に響かせる
明日の僕が幸せでありますように


自由詩 明日の僕が Copyright 近藤正人 2004-01-19 00:00:04
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