ハンバーグ待ち(仮)
服部 剛
日曜の正午
レストランの店内には二人の若いウェイトレスが
できたての料理や空の器を運んで
客のにぎわうテーブルの間をひっきりなしに動いてる
20分前に頼んだ和風手捏ねハンバーグがまだ来ない
腹が ぐぅ と鳴るごとに
テーブルの上に乗せた二つの拳は
小刻みに貧乏ゆすり
壁に掛かった時計を見上げると12時23分
ウェイトレスは慌ててお膳を両手に乗せて飛んできた
「お待たせしてすみませんっ!」
震えてた拳をぱっと開いて
空腹にかがんでた背筋をさっと伸ばして
吊り上げていた目じりをたらして
「はい、どうも〜」
ハンバーグの上に乗った大根おろしは雪崩を起こし
こぼれた鉄板の肉汁に滲みていた・・・
胸の内の小悪魔くんは
( なにやってんじゃい・・・! )
と眉間にしわを寄せ
しぶしぶと割り箸を割って
ハンバーグのかけらをつまんで口に入れた
やがて
胸の内に舞い降りてきた天使さんに
( あなたの日頃のお仕事に手落ちはまったくないですか・・・? )
と優しくたしなめなめられ
思い出す自分の情けない姿
目を当てたくなり
文句が出そうな口に見えないふたを塞がれて
黙ってもぐもぐ手捏ねハンバーグを味わった
ハンバーグ・ご飯・味噌汁をたいらげて
跡形ない鉄板の上に空の茶碗とお椀を乗せる
ふくらんだ腹の重みにのけぞって
見上げた時計は12時30分
胃袋に入れば みんな おんなじ
( ごちそうさま )
小悪魔くんも天使さんも消えた胸の内で呟いた
* 平成十七年・十二月十一日(日)
渋谷のファミリーレストランで昼食の後に