実験城砦
塔野夏子

此処は昔風でそれでいて未来的な
実験城砦
此処に居て僕のすることは
純粋であり続けること
その純粋を自ら頑なに
裁き続けること

此処には僕の他誰も居ない
そして僕はほとんどの時を
高い塔の青白い窓辺で過ごす

思春期じみた厭世と
可憐な自虐を喰みながら
かつて居たことのある世界を
遠く見はるかしている

さびしいとしても仕方ない
僕に似合う現実よりも
僕に似合う虚構の方が
あまりにも多いのだから
僕は此処を離れないし
誰も僕を連れ出しに来られない

夢という夢が 結晶化する迄は

僕は此処に居て
純粋であり続けるのだ
そしてその純粋を自ら頑なに
裁き続けるのだ
青白く醒めた意識のもとで







自由詩 実験城砦 Copyright 塔野夏子 2005-12-11 13:18:30
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