夜明けの水位
望月 ゆき

満水の夜に
感覚をとぎすませながら
無数の魚が泳いでいる
距離と、位置と、
上昇する体温と、
そういうものを
止めてしまわないように


蛇口に口をつけて
あふれ出すカルキを吸うと
水面が降りてくる
そうやって
1ミリずつ
世界は、ずれてゆく
正しい速度で


目盛りが見えはじめると
魚が跳ねて、
そこここに散ってゆく
ブラインドの内側で
尾ひれを
あるいは胸びれを
重ねて眠る
いとしい、遠い他人と


おはよう、を言うために
世界が続くのだとしたら


ブラインドの隙間から流れ入る
その角度で
浅い夢へと切り込むもの
それを、だれかが
朝と呼ぶ


自由詩 夜明けの水位 Copyright 望月 ゆき 2005-12-10 11:45:50
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