冬の飛礫
木立 悟



青空にゆるりと重なりひらく
細く淡い爪がある
遠く静かに狭まる道が
枯木に白く持ち去られてゆく
雲の速さに持ち去られてゆく



朝に散る虹
ふちどる碧
瀬に映る音
鐘の音
どんな虚しい朝にさえ育まれる
空を鳴らす手
鳥を放つ手
ひとつづきの陽の翼
はじけ 降り来るとき
光を覆う光を
さらに覆うグリッサンド
ひとりは見る 飛沫を
ひとりは知る 飛礫を



光へ 金へ
空へ傾く冬の道
熱く 冷たく
多情な鳥の声も降る
古い古い歌を片手に
悲の道をゆく
火の道をゆく
消えゆくものを見つめざるを得ない
夜の道の視線を歩む



灰の背に散る光と音
静かな波のような虹
夜の目の奥へとつづいてゆく
見える道 見えない道をゆく
次々と自分以外の力を脱ぎ捨て
ただそこにあるだけの道をゆく






自由詩 冬の飛礫 Copyright 木立 悟 2004-01-18 10:08:30
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