君の中で思う
松本 卓也

酷く薄暗い部屋の中
退屈しのぎに抱きあって

見つめ合う儚げな視線が映す
明日とか言う流れの先に
僕達は二人でいられるかな

重ねた悲しみを互いに背負って
形の無い幸福を夢見ても
掌に伝わる体温だけは
温もりを伝えていて

いつまで一緒に居られるのかな
隣の君に告げる事もなく
不安はやがて染み出して
頬をはらりと流れ行く

冷たい指が頬をなぞる
泣き出しそうな顔を近づけ
君は無理に笑ってみせる
照らされた肌の色は
ただひたすらに白く霞んで

ねぇ 二人の未来なんて
僕達でさえ分からないのに―――

言いかけた唇を塞ぎ
無造作に絡めた舌
唾液に伝わる温もりが
心をふっと溶かしていって

今 君の中にいるという
この事実だけを抱き締めて
今 君の中で果てる
この事実だけを慰めに


【2005/3/22 筆】


自由詩 君の中で思う Copyright 松本 卓也 2005-12-07 01:32:37
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