冬の呼吸
健
やわらかい
何かがほしい
温かい
何かがほしい
事情を知らない友達の
変わらない笑み
昔好きだった絵本の
死なない猫
何も無かった日の夜の
窓から漏れる生活
たくさんの人が
関わりあう世の中で
僕の口元は冷たい
そしてひとりになるために
目を閉じる
やわらかい
何かを思い出す
温かい
何かを思い出す
五歳と九歳だった兄弟の
泣き顔と思い出
ジョーカーが一枚足りない
ボロボロのトランプ
冬の寒さに震えていた
君の手
失くしていくことばかり
気付いていく日々の中
誰かを否定しながら
誰かに求めてしまう
それでも世界は
僕を
見捨てはしないから
ほしい
それがほしい
遠慮や気の弱さや
計算や嘘からではなく
本当に
優しくなりたい