パースペクティブ
ふるる

    青空の向こうにあるのは、消え損ねた星のがらくた達だ

今日はとてもいい天気だった。
空は青く澄み渡り、雲1つなく、風は穏やかに吹いていた。

    あそこやここに、風の塊が落ちていて、そこらじゅうを駆け回り、洗濯物を散らかしている

遠くを見ると、山々が連なり、霞んでいる。窓の外の木々は、若葉を茂らせている。

    ミルク缶を積んだ馬車があたり前のようにゆっくりと通り過ぎる(昨日はお祭り騒ぎだったというのに)

向こうから誰かがやって来た。
(誰かがやって来たとたんに、木々も、山々も、空でさえもなくなった)

    馬のたずなを握って、ジョニーは丘に向かって手を振る。「エイミー!」

やって来た誰かは話し始めた。「向こうから来た。」と。
向こうとは、あの山々があった方ですか、と聞くと、
「そういうふうに解釈したのか。」と言われる。

    ブルーベリーを籠いっぱいに摘もうとがんばるエイミーはにっこりと紫色の手を振った

やって来た誰かは踵を返すと向こうへ戻って行った。
(誰かが戻って行ったとたんに、木々も、山々も、空も元通りになった)

    「後でね!」二人は同時に言うと、それぞれの仕事に戻る

次第に小さくなっていく誰かの顔は、僕によく似ていたと思う。
(というより、僕自身だと思う。)

    ジョニーと馬車はすたすたと道をあるいて行く男とすれ違った

ということは、今窓際に立って山々や空を見ているのは
(もしやあなたということにはならないだろうか?)

    見かけない顔だな、とジョニーは首をかしげる


今日は、とてもいい天気だった。


    今日はどこへ行こうか、昨日の流星群の話をエイミーとしよう。
    ジョニーは雲ひとつない、澄み渡った青空を見上げながら考える。


今日は、とてもいい天気だ。



未詩・独白 パースペクティブ Copyright ふるる 2005-12-05 10:56:25
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