羽灯火
木立 悟




ほつれ湧き出る緑の影
ふいに生まれ溺れるもの
双つの空と迷いの木々
巡りかがやく枝と枝
無数の緑のなかの一葉


空に立つ空
こがねの樹
波打ちながら遠去かる陽
金は緑に
緑は金に
空は水にあふれつづける
空は空に沈みつづける


灯火の蝶が灯火を弱め
花のように流れに浮かび
闇に擦れあう音をたて
闇を静かにふくらませている


したたりおちるものは少なく
受け取ろうとする手は多く
黒は悲しくひらかれて
鴉のように散ってゆく
ひともとの夜の流れに散ってゆく


隠しごとはあふれ
隠しごとではなくなり
したたりは目に
したたりは羽に
たたえつづけ あふれつづけて
異なる土の火 空の火の
ひとつひとつを浮かべ流れる


白と黒の平穏を
涙のように書き留めて
闇のなかの手と指は
互いを照らしゆらめきながら
雨の向こうの灯火を見ていた
遠い闇のふくらみを見ていた








自由詩 羽灯火 Copyright 木立 悟 2005-12-01 17:19:22
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