浴槽

蛇口が捻られたのに気付いて
必死で押さえつけるけれど
耐え切れず 
当たり前のように
落ちる


浴槽には
透明で 
不思議な色に染まった水が たまっていて
新入りは 小さな音をたてて
広がる波紋に
溶けていく

今日は一滴では終わらなかった


余韻を残すように
間を空けて
落ちる

その度に
異なる音と
異なる色が広がっていく

今日は一滴では終わらなかった


不思議と濁ることは無く
透明をたもつ
浴槽の水
その
色の変わりようが
痛くて 
思わず手を伸ばす

触れた指の輪郭に沿って
滑らかに下っていく
雫は
音をたてず
温かい

混ざり合ってしまう その直前まで
肌を伝う流れを その確かな色を
真っ直ぐに見つめ続けた


自由詩 浴槽 Copyright  2005-11-26 01:02:39
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