浴槽
健
蛇口が捻られたのに気付いて
必死で押さえつけるけれど
耐え切れず
当たり前のように
落ちる
雫
浴槽には
透明で
不思議な色に染まった水が たまっていて
新入りは 小さな音をたてて
広がる波紋に
溶けていく
今日は一滴では終わらなかった
余韻を残すように
間を空けて
落ちる
雫
その度に
異なる音と
異なる色が広がっていく
今日は一滴では終わらなかった
不思議と濁ることは無く
透明をたもつ
浴槽の水
その
色の変わりようが
痛くて
思わず手を伸ばす
触れた指の輪郭に沿って
滑らかに下っていく
雫は
音をたてず
温かい
混ざり合ってしまう その直前まで
肌を伝う流れを その確かな色を
真っ直ぐに見つめ続けた