冬に生まれた夏へ
英水

遠い冬に生まれた夏が、またこの冬に巡る
僕はあなたの手にそっと触れ、

けれど
僕はあなたに触れることができたのだろうか

夏が 自ずからの素晴らしさに耐え切れず
崩れてゆく幾つもの午後

幾つもの蝉が 泡のように生まれ
夏の声を 拡声し 鎮め
崩れて行く夏とともに 地表へと帰ってゆく

そのためだけの器官

 昨日の返事に耳を澄ますと、後悔が生まれてきます
 それを忘れるために 耳をほおり投げました 
 土星の輪の中に身を潜めていることを願う

いったい
夏は、全て通り過ぎるものなのだろうか

あなたに触れる

 そのためだけに 
 僕は巡るだけの
 蝉になりたい


自由詩 冬に生まれた夏へ Copyright 英水 2005-11-25 20:07:24
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