片想い 03.その笑顔が
逢坂桜

彼女の場合


   友達が、うれしそうに笑っている。
   「でね、そのときね、あたしね」
   かわいいなぁ、と思う。
   「あのコも笑ってくれてね」
   男の子が笑うのも、かわいいなぁ、と思う。
   だけど、あたしがすきになった人は、あんまり笑わない。
   そういえば、どうしてすきになったんだっけ?
   「また一緒に帰る約束したの」
   「よかったね」
   「あの樹、いいよね。目印になるから」
   待ち合わせにしか使えないような、でっかい樹。
   「あ」
   「なに?どうかした?」
   「・・・ううん、なんでもないの」
   思い出した。
   あんまり表情なくて、人付き合い悪そうで、とっつきにくそうな人。
   だけど、あの樹の下。
   「ひとめぼれって、あるよね」
   「あるよね」
   少しまぶしそうに、眼を細めて見上げた、その顔。
   「・・・」
   窓を見るふりをして、視界のすみっこにあの人を入れる。
   やっぱり、すきになったらしかたない。


[ 片想いで10のお題 ]
配布元:Title--Melancholy rainy day(冴空柚木様)
   
   


自由詩 片想い 03.その笑顔が Copyright 逢坂桜 2005-11-24 21:17:22
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題詠課題:恋愛