空の一片、届かないノック
霜天

落ち葉の鳴る、崩れ落ちる音
誰も妨げないテトラポッド
景色、静かな君を当たり前に思って
空に手を向けて
朝、誰もいない道に目を閉じて歩く


歌を歌えない
と気付いたのはいつだっただろう
ビルの隙間、細い空へ
ロープを投げて引っ掛ける
手繰り寄せるまでに腕は
それに耐えてくれるだろうか


広い通りを東から西へ
何度も繰り返してきたけれど
街路樹の成長なんて、足を止めるほどでもなくて
それも結局倒れてしまった
音も、なく
君の家のドアを鳴らす
空には大きな穴が開いて
僕らはそれに触れることが
もうすぐ、だ
君の家のドアを鳴らす
静かなことに慣れた君は
そっと息をして、気付かないでいる


一心に繰り返している
同じリズムで繰り返している
誰も、妨げないテトラポッド
崩れる落ち葉の鳴る、音

気付かない
気付こうと
きっと、そんなところまで



注意深く、朝が
ビルの隙間の細い空
分配されている、ほんの一片
その向こう側の僕の、手繰り寄せるロープの手
いつもと同じノックの音、繰り返しているリズムの先に

君がドアを開ける家


自由詩 空の一片、届かないノック Copyright 霜天 2005-11-23 01:36:44
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