橙火
ミゼット

薄暗い午後、
部屋の中にひとりでいると
不満、不安が沸いてきたので
十糸子のように
オレンジを買い、食べる事にいたします。

服を脱いで、リノリウムの床に座ってオレンジを掴む
ぼんやりとした部屋、その果実だけが全て

オレンジを食べる
皮を剥いて
オレンジを食べる
荒れた喉がしみて痛む
オレンジを食べる
裸のままで、食べる

窓の外でサイレンが鳴った
空に赤いセロファンが見える
私の部屋がかすんでいくばかりで、オレンジだけが世界の全て

オレンジを掴んで
皮を剥いてふさをちぎり噛んで飲み込む
荒れた喉が痛むけれど
種を吐き捨て
裸のまま、オレンジを食べる

不満を、不安を飲み込んで
ただ一本の管になるために


自由詩 橙火 Copyright ミゼット 2005-11-21 20:08:44
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