二行空行
黒川排除 (oldsoup)

出土せねば欠土とし学者母の墓前へ


閉じられた形跡のない倉へ続く道


こうも容易く陽動されては虹の赤へ


段差為すべきこと為し静かな養老院


阻む樹液 交響楽団 森を出ず


段々畑降りてマントルにぶつかる


船つくる
足りない指は
川で補う


雨だよ白鳥ぼくらは傘をさすけれど


奥のドアに/引きずられて
もし、幸せですか


枝伐りたくもなく隣から繁茂する


夜の謝辞待つ
哀れな独力
   ふとる虚無僧


壁の涎の痕を消すとき敵として


遠い旅客機に前後左右の石灯籠


追い抜かれ
変容され
 近所の子らで
 なくなる子ら


豆電球を竿に吊して黒海舐める


密談が好きではぐれた旅団は崖に


故事めくる
  めぐるとしたくて
  濁点孕む


連の字はひとつ形見に重ねる船


夜はきっと何も見えなくなるハイウェイ


圧制下の岩低く孤島とすべく放水


交信途絶えし北海道 雪降り積もり


側溝掘れば掘りたくあることも難しく


偽名つかう葬儀の赤い服殊に照らし


告げにきた鴎も帰路も細らしめ


午後十一時今日がまるごと作り話


戸外に捨ててある木切れから音信通ず


広い庭
ひた走る
引きちぎれるまで


併走したい雲につかまれて
             自転車倒れる


活動家から磁石蹴っても蹴っても出


単一の動機 生きた魚群が流れ込む


雪が降る窓にプリンターを向けて動かす


椅子をつくりそれから机、ひととする


暦の上でまったき等間隔となり


夕日がこぼす灰がたまって黒い砂丘


暗く美しくかつがれて睫毛など仰ぐ


驚くほどかつての山と歩く


青空教室曇天の日は石像はこぶ


泡ながせる水の傾き滑空台


手旗信号送ろうアルゼンチンの峰に


宮殿へ どくどく水を流しながら


白みはじめるこのへんの橋と影絵になる


剣を刺し金魚を吐かせてかえる手品師


川柳 二行空行 Copyright 黒川排除 (oldsoup) 2005-11-18 14:14:10
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