猫の結婚記念日
銀猫

ベランダは東向きだから
朝はとても眩しいよ

  彼ね
  厳しい審査の結果
  高得点で合格しないと見せないよ
  足の親指を齧ったあとの
  くりん、とキャット半回転

  もう齧られちゃったの?
  うーん
  ちょっとジェラシー
  わたし以外の哺乳類に
  そんな仕草をするなんて


この部屋は南向きだから
午後はとても暖かいよ

  ご飯を食べるのも
  お風呂に入るのも
  いつも一緒に忙しかった

  病気になると
  ひやり、とする肉球を
  何処で覚えたかおでこにあてる

  そんなこんなの甘い生活
  背中をいつもくっつけ合って
  互いを温めたり
  喧嘩もしたり
  たったふたりの和毛の生活

このテーブルには
誰の食器も置かないつもりだった

けれど
あなたが座ってしまった
大きなパジャマとマグカップを味方につけて

  しょうがないな
  また親指齧ってる
 
拡げた腕のすこし先にある
洗脳されそうな笑顔は
こともあろうか
ふたつの生き物に
飼育係りのような度胸で挑んできた


ご苦労様です
もうあれから二年です

引っ掻き傷の絶えないカーテンで夜を遮り
同じ毛布に隠れてから




    注(和毛:にこげ。柔らかな毛)


自由詩 猫の結婚記念日 Copyright 銀猫 2005-11-18 13:09:40
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