白秋ー2005
がんさん

谷地出でて 宵待ち月の 淡さかな   


竹伐るや 響くは子らの 声ばかり  


雁鳴くや 湯呑み一つの 影法師   


栗落ちて 音暖かき 背戸の闇    


夕暮れて 青き蜜柑の 酸っぱさよ   


葦火たつ 郷の水辺の はるけきや   


宵闇の 奥より届く 犬の声     


哀しくも 泡立ち草の 繁る野や    


ふるふると うつす命か 秋の水   


東塔の 軒の暗さや 秋の暮れ      


巡る夜は 猫と二人の 月見かな    


秋の夜は みゆきの唄に 人肌の酒    


木の間から 光洩れても 秋の雨    


ひりひりと 秋は無頼の 身を洗う    


魂魄の 音なき空を 舞う蜻蛉    


秋ふかし 手桶に温き 水がみつ    


金木犀の 降るる匂ひや ぬえの闇   


もみじして 山深まりぬ 相の皺


八ヶ岳 にょきっと生えて 秋日和


雄山の 初冠雪は 遥かなり


トン、トカ、トン 刀工うつや 軒の露


もみじ葉の 舞い、舞いてなお 道遠し


赤ありて 黄ありてもみじ 哀しかり


新聞に 異郷を見たり 菊の宿


十六夜を 連れて一緒に 疾駆せり


俳句 白秋ー2005 Copyright がんさん 2005-11-17 09:30:48
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