おでこ
仲本いすら

38.6度の熱で
静かにベッドで横になってたら
アトムやら
太宰治やら
はちべえなんかが

おでこの辺りで
なにやら難しい話しをしてた

その顔は
どれも真剣で

声をかけようと
思ったのだが
さすがに
水を挿してしまう
気がしたから
やめておいた

でも
おでこで
太宰治が
執筆なんて
しはじめるから

くすぐったくて
眉間に
しわを
三本
寄せてしまった

太宰治は
おほん、と咳をはらい

僕は
ごめん、と
一言だけ漏らした


おでこの裏っかわでは
氷枕が
寒々と音を立てて

あまりの冷たさに
くしゃみをしたら

アトムにまで
おほん、と 言われてしまった
はちべえは
笑ってた

ごめん、と
一言だけ漏らすと

部屋はまっしろになって

僕は一回だけ
ごほん、と
咳をした


自由詩 おでこ Copyright 仲本いすら 2005-11-12 13:05:40
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