もう冬だと言うのに。
仲本いすら

枯葉がたくさん 地を這っているので
焚き火をしましょう、と
あなたが言うものだから

ボクは
ライターと 竹箒を
しっかりと 握るのです

この庭中の 枯葉どもを
全部集めようとすれば
きっと
時間など
当に過ぎてゆくでしょうに

けれどもあなたは
無邪気に 枯葉どもを
集めてゆくのです


もう 冬だと言うのに


枯葉どもが
山のように 積まれるころには
もう、月も顔を覘かせて

あなたは うれしそうに
さぁ焚き火をしましょうと
暗闇の中から
ささやくのです

悴んだ手で ふるふると
ライターを 枯葉に 近づけると
思いのほか
強く
強く
燃えて


もう 冬だと言うの に


火の粉が 天に 昇ると
どこからか
蝶々の群れが
火に向かい

あなたは
蝶々が 燃えてしまう と
大きく 泣いたのです


それが蛾だとは知らずに


あなたにとっては
蛾も
蝶も
おなじ いのちなのですね


もう 冬 だと 言うの に

蛾は
キレイに
燃えてゆくのでした




自由詩 もう冬だと言うのに。 Copyright 仲本いすら 2005-11-12 13:02:53
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