朝、ぬすびとは
ZUZU

霧雨のなかを
朝ぬすびとは帰る
愛するひとのもとへ
かれこれ三日もなにも
食べさせてあげることができない
ついできごころで
ぬすんだほしを
返してしまったせいだ
俺のこころも
俺のゆびさきも
もう錆び付いてしまった
そうなっちゃあおしまいだ
もう足を洗うしかないんだ
朝七時に起きて
夜九時に眠る
そういう生き物にならなくては
いけなくなってしまった
それで今夜とうとうなにを
持ち帰ったのか
俺は
一個のバス停だけを
ぬすんできたのだ
いとしい女は
それでも微笑んでくれた
いいバス停だわ
行き先はどこかしら
最終バスは何時なの
時刻表ははげかけていて
始発の時間すらわからない
俺は情けなさで涙があふれた
もういいよ
おまえはどこへでも
いっておしまい
俺はこのバス停のふもとに座って
こないバスでも待ち続けるよ
女はとなりに座って
消え行く空の星をゆびさした
あれがあなたの
ぬすんだほしよ
しおどきなどありはしなかった
いつでもしあわせだった
ああ女よ
俺がぬすんできたもののいくつが
おまえをしあわせにしただろう
なにもなにも
ただ俺は
じぶんをいつわっていただけだった
金色にかがやくむぎよ
おまえのむぎだ
パンをお焼き
そのにおいのなかを
俺は自首することにしよう



自由詩 朝、ぬすびとは Copyright ZUZU 2005-11-09 16:52:48
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