「電子レンジ」
プテラノドン

電子レンジがチンと鳴る。
ウェイターはコックを呼んだ。
電子レンジがチンしましたよ、と。
   
 気持のよい料理、
 ワインを飲み過ぎて酔っぱらった料理。
 うっかり火を近づけてはいけない。
 たちまちチキンは炎に包まれて
 苦しさのあまり、
 テーブルの上をかけ回るのだから

ウィターは侮蔑的な眼差しを向けつづけた。
そんなにこっちを見ないで欲しい―
コックはボタンをくねくねいじくった。
 
 透明な料理、
 はるか遠くへ離れていってしまう料理。 
 追いかけてフォークを突き刺さなければならない。
 あるいは君の料理かもしれない。
 どうか許して、
 空腹のあまり君まで食べようとした事を
 
簡単に作れていいじゃないか。何も悪くない。
経済の発展とはそういうものだ。
いよいよコックは厨房の奥へ消えてしまった。が、

ウェイターはかえってその方がよかったと思っている。
というのも、あの鈍いコックがまともに料理をしたところで、
電子レンジに敵いはしないのだから

もちろん、私だってそうだ。だとしたらこれ以上
減らず口を叩くのはよしておこう。ただ、一つ思う事は
電子レンジの給料は我々よりも高い、ということ。

幸い、電子レンジは不満をもらさない。
「チン!」と言う他に無駄口を叩くことはない。
もし無駄口を叩くような事があればとっととクビにされる

 哀れな電子レンジ。



自由詩 「電子レンジ」 Copyright プテラノドン 2005-11-09 00:36:38
notebook Home 戻る