黄金虫
ミゼット

赤いランプの吊り下がる
あらゆる街の角に這いつくばり
わたしたちは歌を待つ

それは煉瓦の隙間から流れくるものであり
それは男の外套から聞こえるものであり

わたしたちは何も知らない

赤ランプが溶け出し
夜が過ぎていく

歌が聞こえないかと彼女が言うが
やけに光が明滅して何も聞こえない

それは泥水の中にあり
それは痩せこけた母が隠し
わたしの手のひらや彼女の右足に宿り
わたしたちを路上へと縛りつけるもの

わたしたちは歌を待つふりをして
這いつくばり腕をのばし互いの身体を繋ぐ

光が明滅するまま
ちぎれ、かすみ、崩れ、こぼれる

ランプは溶けて
もうすぐ夜が明ける
けれど
わたしたちはまだ、何も知らない


自由詩 黄金虫 Copyright ミゼット 2005-11-07 18:46:44
notebook Home 戻る