ラムチョップのおはなし。
仲本いすら

第1章 『世界にひとつだけのラムチョップ』

とあるところに、とてもとてもラムチョップが盛んに食されている村があった
ラムチョップ畑、ラムチョップの滝、ラムチョップショッピングモール。
とにかく、ラムチョップが大好きな村人たちはラムチョップしか食べなかったそうな。
ある日、ひとりの少年がこう言った

「いちばんおいしい世界にひとつしかないラムチョップが食べたい」と

母親は三千里の距離を必死で歩き、各地に伝わる伝説のラムチョップの作り方を

学ぶ旅に 出たのだったー。



第2章 『ラムチョップこわい』

ジョセネフはポルルーチに「ボクはラムチョップが怖いんだ、ああ、ラムチョップなんてなければいいのに」と愚痴をこぼした
いたずら好きのポルルーチは「しめた」と思い、翌日ジョセネフの台所に数え切れないほどのラムチョップを山盛りにしてこう言った。
「どうだ、怖いだろう。おまえの大嫌いなラムチョップだぞ」
ジョセネフは「ひー!」と言い、台所に引きこもってしまった。
高笑いをしながらポルルーチは自宅へ帰り、翌日ショセネフの家へと向かう。
すると、あら不思議
あの山盛りのラムチョップが見事骨だけになっているではないか。
「おまえ、ラムチョップはどうしたんだ」
「ああ、それならあまりにも怖いんで口の中に隠したのさ」
ポルルーチはジョセネフの言動に疑問を持ち、こう問いかけた

「おまえ、本当は何が怖いんだい?」

「そうだなぁ・・・今は冷たいジンジャエールが怖い」


第3章 『ラムチョップちゃん』

「おばあさん、おばあさん」
「なんだい、ラムチョップや」
「おばあさんのおくちはどうしてそんなに大きいの?」
「それはね、おまえをおいしく食べるためさ」
おばあさんはナイフとフォークをとりだして、手を汚すことなくおいしく
ラムチョップちゃんをたいらげたのだった。


第4章『救命ラムチョップ24時』

からからとベッドの車輪が回り、赤い蛍光灯がチカチカと廊下に染み渡っている。
「先生!ラムチョップは・・・ラムチョップはどうなってしまうんですか!」
声を荒げる男の目頭は、当に熱くなっている。
「あれが届かないかぎり・・・なんともいえませんな」
しかめっつらをしたままの医師に掴みかかるシェフ。彼の拳はラムチョップの油でギラギラと輝いていた。
「どうして・・・どうしてなんだ!!!どうして、オレンジソースじゃないといけない!!
別に・・・別に・・・・しょうゆだってウスターソースだっていいじゃないか!!」
「それではラムチョップの本来の味が死んでしまうんだ!」

二人の叫び声がこだまする中、ラムチョップはオーブンの中で焦げてしまっていたそうな。



※ これらの物語はすべてフィクションです。


未詩・独白 ラムチョップのおはなし。 Copyright 仲本いすら 2005-11-02 20:33:14
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