たもつ



話に尾ひれがついて
泳ぎだす速度で
泳ぎだす
身体にあたると少し痛く
自分の血はまだ赤い

眠たい目を擦りながら
恋人のだらしない口元にキスして
唇から溢れたものは
唇に戻るのだよ
と、聞いちゃいない
恋人は

たかし、たんとお上がり
母の声が聞こえる
母さん、僕はたんと頂いてます
それよりその言葉は
たかし、という子にかけてあげてください
何度言いたかったことか

窓を開けると
話は隣家の外壁との合間をぬって
景色の方へ泳いでいく
窓を閉めると
景色は
窓で終わる





自由詩Copyright たもつ 2005-11-02 14:36:03
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