見たことのない海
千波 一也


水は途絶えを忘れる薬

波を待ち望む青年や
イルカを愛する少女の瞳

波うち際に揺れる小舟や
小高く揺れる果樹の枝


彼ら
彼女らの
その目の海は
わたしには見えない
けれど
水は途絶えを知らないゆえに
わたしはその海を
知っているのだ


見たことのない海は
幾らでもある
なんとも絶望的なその裏に
知っている海もまた
幾らでもある


クルスの形に腕を組み
船頭のいないゴンドラで独り
こころを運ぶ波を迎える

水に生まれた者として





自由詩 見たことのない海 Copyright 千波 一也 2005-10-31 17:19:39
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