悲しい人
たちばなまこと

さようなら 悲しい人
そのアクセスは朝未きまで途切れなく
届かない女を探り続ける
あの秋
重い鎖は切られることなく ウインクひとつでとけた
遅い朝 手を伸ばしても
溜め息ですら拾えない


悲劇の人になりすまして
哀願の人になったり 怒りの人になったり
覚えた感情をありったけ撒き散らす
悲しい人
幼子のように
塩辛い水たまりを虚構の海にして
凪いだり白波立ったりするような
悲しい人
息をしていたはずの床にはもう 立ち位置がない
何千も押し寄せてさらおうとする波から
逃げただけの女
終わらない執着に胸をやきながら
凍結させていた心を並べはじめた
前衛的であれ と


北の街 大通 光のラインから
今宵も見え隠れする悲しい人
本当のさようならは
いつまでたってももらえない


自由詩 悲しい人 Copyright たちばなまこと 2005-10-31 12:53:54
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