蒼と手のひら
木立 悟




空と鉄の擦れ合う音が
まるくやわらかな緑にはじけ
蒼く蒼くしたたりおちて
土の下の土を流れる


夜の水を抄いとる手
音のない曲がり角
遠く軋む火に染まる
誰もいない光に染まる


悲しい笑みが橋から落ち
花のなかに横たわる
橋と空は蒼くにじむ
ひとつのように 蒼くにじむ


目をつむり
手をひらき
空のかたちの光にひたし
そのままの指に爆ぜる火を聴く


とどまらぬ背の明かりから
もどれぬ道の交差から
蒼の蒼は生まれつづけて
蒼の蒼に重なりつづける


空をつくる空のひとつが
にじむ橋を明るく揺らし
横たわる笑みを抱き上げて
花の向こうへ歩いてゆく


景のまわりを巡る景
景の隙間に残る指跡
手のひらの水に映る雨
蒼の底へ降りしきる







自由詩 蒼と手のひら Copyright 木立 悟 2005-10-30 17:14:20
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