蒼と手のひら
木立 悟
空と鉄の擦れ合う音が
まるくやわらかな緑にはじけ
蒼く蒼くしたたりおちて
土の下の土を流れる
夜の水を抄いとる手
音のない曲がり角
遠く軋む火に染まる
誰もいない光に染まる
悲しい笑みが橋から落ち
花のなかに横たわる
橋と空は蒼くにじむ
ひとつのように 蒼くにじむ
目をつむり
手をひらき
空のかたちの光にひたし
そのままの指に爆ぜる火を聴く
とどまらぬ背の明かりから
もどれぬ道の交差から
蒼の蒼は生まれつづけて
蒼の蒼に重なりつづける
空をつくる空のひとつが
にじむ橋を明るく揺らし
横たわる笑みを抱き上げて
花の向こうへ歩いてゆく
景のまわりを巡る景
景の隙間に残る指跡
手のひらの水に映る雨
蒼の底へ降りしきる