フラグメンツ #21〜30
大覚アキラ

#21

 真冬になったら
 一緒に海に行こう
 そして
 だれもいない波打ち際で
 足を濡らしながら
 凧揚げしよう



#22

 プリンが
 グシャって崩れる
 あの瞬間
 
 皿の上で
 自重を支えきれず
 無様に広がって
 
 プリン
 ああプリン
 一巻の終わり



#23

 サングラスが欲しい
 おれに似合うサングラスが
 どうせ青二才さ
 もうじき三十八歳だけど
 青二才さ
 だから
 青二才に似合うサングラスが
 欲しいんだ



#24

 紙飛行機が失速して
 堕ちていくときのように
 かろうじてベッドに辿りついたら
 あとは
 ほどいてゆく
 口の中で
 キャラメルを溶かすみたいに
 ゆっくりと
 ほどいてゆく



#25

 死んだら
 ムーミン谷に行きたい
 天国には行きたくない
 
 神様お願いです
 私が死んだら
 ムーミン谷に行かせてください



#26

 日曜日の朝
 めざめたら
 魂がヨダレになって
 枕にこぼれおちていた

 あっ
 やべえ
 オレ死んでるよ

 “ほんとうに”死んでしまう前に
 大急ぎでヨダレをすくって
 教会にスッ飛んで行く

 復活の儀式は
 一回三万円



#27

 新しくギタリストを入れるなら
 ストラトか
 レスポールか
 そんなくだらないことで
 揉めに揉めて
 
 結局その一週間後
 ベーシストとボーカルは決闘することに
 
 決闘は
 開始わずか10秒で
 ベーシストがフェンダーのジャズベースで
 ボーカルの頭蓋骨を叩き割って
 勝負は着いた
 
 当然ながら
 ベーシストは刑務所行き
 懲役15年
 
 それから
 あの伝説のバンド
 「ジェイル・バード」が結成されるまでには
 まだ色々な出来事があるのだが
 その話はまたあらためて



#28

 ケンタッキーフライドチキンにむしゃぶりつく
 きみはまるでケダモノそのもの



#29

 うつつを抜かせ
 ひたすらに
 うつつを抜かすんだ
 
 ポンスカポンスカポンスカ……



#30

 トンカチで殴れ
 おもいっきり
 豆腐なんかじゃ
 もう
 物足りなくなってしまったんだ
 ふんわりとしたメレンゲを
 殴るんだ
 トンカチで


自由詩 フラグメンツ #21〜30 Copyright 大覚アキラ 2005-10-28 00:28:11
notebook Home 戻る
この文書は以下の文書グループに登録されています。
フラグメンツ