かや

洗面台の鏡を傾けたら
小さい流木がころげおちた
どうやら 渦巻くのは小さい海
どこか角度の違う世界へと
つながっているらしい

悟ってはいけないよ、と
こころの母の声がして
そっと指を離し 髪をとかす
数回目に櫛をあてたとき
いつも通りがそこにあった

苦しむのはおまえだから、

理解わかってるよかあさん、
温めすぎた味噌汁を
ゆっくりゆっくりすすりながら
やっと返事をする
整えた前髪がかすかに揺れた

おまえはいいこだね、

振り払えない声だった


流木を探しに
海に向かう

なるべくきれいに化粧をして
無垢の風を装って


自由詩Copyright かや 2005-10-25 21:57:07
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