それが冬のはじまりでした
ベンジャミン
つんと鼻を刺激する
空気の冷たさに驚いた朝
慌てて出したコートには
お気に入りのマフラーが巻かれていて
それは大袈裟かもしれないと
くるりほどけば
ひらり舞い落ちた
枯葉が一枚
すっかり痩せたその色は
まだ秋の庭には似合わないと
胸のポッケに挿してあげようとしたのに
はらはら散ってしまいました
そういえば忙しい日々の中
いつの間にか来た春を
追い越してしまった夏を
迎えることもなく秋を
送ることもなくもう
冬なのかと
寒さを思い出させるように手のひらの中
小さくなった身体をふるわせる
その枯葉に
言い忘れていた
去年の冬の
さよならを告げようとすれば
それが冬のはじまりでした