銀に 緑に
木立 悟





ほうほうと
夜を捜す声がする
ほう 一羽飛び
ほう 一羽飛び
またひとつ木は居なくなる
雨のなか
しっかりと手を握る子ら
緑の闇に
飛び去る羽音を見つめている



燃え昇る花
燃え昇る花
狼煙の渦に満ちる花
花のまばたき
花のまぶしさ
雨にむかい
昇りつづける



動かないからだを過ぎる風
裂けながらなおまわる文字
遠い雨が音になり
傷とともに空を馳せる



かがやきはひとつずつやってきて
左目のかたちを確かめる
花に生まれ 名づけられ
曇の震えに呼ばれるもの
ひび割れた緑に照らされるもの



夜から朝へのわずかな熱に
砕け ふたたびはじまるうた
銀の空に 銀の炎で描かれた
まぶしくて見えない声を読む
まぶしくて見えない羽を読む



牙の生えた鉄の輪が
歯車になることを拒んでは
曇のなかを昇りつづけ
夜に朝に羽に手に
かがやきとまばたきは降りつもる









自由詩 銀に 緑に Copyright 木立 悟 2005-10-23 19:39:56
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