異命へ
木立 悟


降りてくる空
降りてくる影
枝に重なる
灰色の横顔
すぎる鳥が
すぎる冬が
小さな建物を見つめている



家と家の間の景色が
まるくふくらみ はみ出している
赤い紙が貼られた古壁
いのちの外のいのちが
生まれては消えてゆく場所を
見つめている



雨がつくる明るい夜
道の上につづく塗料が導く その先
建てられたばかりの家が燃えている
人はいない
どこにもいない



門にひらいた金属の花から
静かに錆が降っている
子供の歌が聞こえている
朝の町の
あらゆる隙間から立ちのぼる



止んではつづく風のなかで
小さな建物が樹々を読んでいる
ひもとく音が重なり合って
こぼれる音が重なり合って
死に向かうものに話しかける
生まれくるものに話しかける





自由詩 異命へ Copyright 木立 悟 2004-01-09 00:18:43
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