空隙一過
A道化










金木犀の小花が
打ち明ける秘密を
直ちに忘れてしまってこそ空は
どこまでもひとつの
どこまでも青く澄み切った隙間です


衣服を自らほどいたわたしたちは、一続きの
狭ければ狭いほど温かだった隙間を失い
その、瞬間的な、気の遠くなるような寒さのあと
別の隙間が急激に形成されてゆく錯覚の温かさの為に、本当に
気を遠くすることが出来そうでした


最初に聞いた秘密から順に、あなたたちは忘れてゆくでしょう
2番目に聞いた秘密を、あなたたちはきちんと2番目に忘れるでしょう
わたしたちの秘密もわたしたちの呼吸も
常に漏れてゆき希釈されてゆきそれでもわたしたちは
密封を完成させたくて、最小限の隙間を形成し温め続けたくて、


ああ、
けれど皮肉にも、それでこそ尚更に
あらゆるわたしたちが、あらゆるわたしたちに
わたしたちの空隙の中、既に
忘れられてゆく段階に入っています



2005.10.19.


自由詩 空隙一過 Copyright A道化 2005-10-19 17:16:18
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