長雨
なつ

まるで代わりのように、降る
悼むように
かき乱さぬように
しずかな泣き声の、雨

追われていく時間
ぎりぎりのところで
感情の発露をせき止めている

こころの中に
墓標に傘を差しかけるような、映像

身を寄せ合う畳の部屋から
雨の生まれた場所まで
今朝、黙祷は辿ってゆきました

灰色にけむる街と
尽きない長雨
黙るわたし達と
泣いている、空

優しい呼吸の仕方を
呼び起こそうとあらがっている

座り込んだ壁際からも
いくつも水滴は薫って
境を越えないかなしみを、告げる


自由詩 長雨 Copyright なつ 2005-10-17 22:06:42
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