ねこみみをつけたがるおんな
あおば
山月記の中島敦は32歳のときに南洋の信託統治領へ教科書編修の旅に出た
トラック島とパラオ島間は
4発の水上飛行機
朝潮に乗り
2000m上空から
輝く海の
小さい島を眺め
のんびりとした島民は
眼下の島民は
信託統治の圧制に
心と糧を奪われて
いじめ抜かれて
歩かされている
だから教科書より先に
編集しなければならないものが
ありすぎると思っていた
その頃は
太平洋戦争の緒戦の勝利に
国中躍り上がって喜んで
有頂天
酔っていた
総力戦の
製鉄の
蹈鞴を踏み続け
こんなはずではなかったと
金物無くして
仕方がないから
竹槍の穂先を炙って
幻の本土決戦に備えた
井の中の蛙の心根と
いまから考えると
可哀想なくらいな
勘違い
動物的と決めつけられた
島民と国民は
猫耳を付けて
化けて出ようかと
そんな昔の話を思い出す
ふさふさで
まっしろな
ねこみみつけて
ブーツを履いて
バックを持って
おしゃれに闊歩
ウインドショッピングするの
今どきの
女子中学生はなにを考えているのかと
小父さんは怪訝そうに眺めている
娘の親の小母さんは
娘のしたがることは
よく分かるという顔して
一緒に歩く
そんな小母さん
横目で見ながら
キタキツネの缶詰の中身は
誰も見たことがないとは
言ってくれるなよ
草臥れかけた小父さん
そそっかしい
そこのおっかさん
猫耳の由来は
ようく
知ってるよね
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作(2005/05/27 タイトルは「poenique」の「即興ゴルコンダ」