手首への冬
A道化
葉擦れの赤錆は
はじめは
軽い混入だった
冷たい赤い陰影を増してゆくのは
葉擦れの色として微かに現れた感情の
冷たいことを、赤いことを
葉が何度も抱擁するからだ
それでも
さささ、さらら、の
音の重なり、重なりに
氷への気まぐれな接吻の余韻のような
決定的なお別れが、隠し切れなくなれば
手を振って
嗚呼、
手を振って
お別れした相手があちらを向いた瞬間に
手首からはもう、手のひらが失われている
軽い混入だった葉擦れの赤錆は
葉擦れを風に棄て
お別れそのものの証拠も消し
あとは何も、なくなって
あとは誰も、いなくなって、だからこそ
空っぽの手首には確実に、冬が来るという法則が
嗚呼、無数の手首に、静かに受け取られてゆく
2005.10.16.