夜とまたたき
木立 悟





午後をわたる数羽の鳥が
いくつもの笑みを描いている
空と曇の鈍のさかいめ
まぶしく見つめる目のなかを
笑みはめぐり飛び去ってゆく


曇を映した滴にかがやく
水の壁のような森
遠い音や遠い色
答えを教えてくれなかった声
午後の肌をすぎてゆく鳥


貫く痛みは貫いてゆく
さみしいものを貫いてゆく
貫かれたことさえ気づかずに
さみしいものは歩き出す
傷からこぼれる光を踏みしめ
淡くまたたく足跡を置く


夜の間近に
見えてくる目
白くまぶしく
見えなくなる手
鳥は集まり 木に変わり
炎は分かれ 鳥に変わる


通りすぎたばかりの窓の明かりが
もう消えていることに気づいたとき
ただそれだけのことが悲しくさみしく
踏みしめてきた光たちと
何も照らすことなくまたたきつづける
わずか数十年の足跡を思う


夜へ 夜へ
集まる火の粉
見えなくなる手に触れてくる鈍
笑みのかけら
鳥のかけらとともに舞い
つたないかがやきの手となって
ひとりつづく足跡の
見えない行方を照らしてゆく








自由詩 夜とまたたき Copyright 木立 悟 2005-10-13 13:45:07
notebook Home 戻る