運動会の、空へ
yo-yo


せんせい、私バツイチです
いまも減点ばかりでごめんなさい

ひとり残されて
校庭で逆立ちの練習をしている子
あれは、キミだろうか

きれいなアナウンスの声に嫉妬してしまう私
富士山ってそんなに高いのか
3776m、ミナナロウでしたね、せんせい
でも、だれもなれやしない

5段組みの
てっぺんで輝いてる子
キミでないことはたしかだ

キミは高所恐怖症で運動オンチ
逆立ちもできないし側転もできない
富士山のずっとずっとすそ野の
地べたに伏せている子らのひとり
土だらけになっている
そんな子らのひとり

さがしてもさがしても見つからない
キミの四季はただ塗りつぶされてしまう
キミの大地は灰色のクレヨン
キミの空も灰色のクレヨン
もくもくと、もくもくと入道雲の
キミはもくもくのひとつ
ゆうだちの雨粒のひとつ
そよぐ稲穂のひとつ
はらはらと落葉のひとつ
こんこんと雪のひとつ
そして、桜の花びらのひとつ

キミはどこにいるんだ

終わる終わる
キミを見つけられないままで
運動会が終わる

キミは私を避ける
キミはすぐに目をそらすから好きだ
キミの名前が好きだ
ノートにキミの名前をいっぱい書いて
いっぱいキスをする

せんせい、知ってますか
キスって宿題の味がしたんですよ
それと、私は逆立ちもできます
バク転もできます

逆立ちをしたら
キミが見えるだろうか
キミのいない校庭をもちあげて
万国旗の空へ落ちてゆくんだ
青い波紋がひろがって
だんだん視界が薄くなる
だれもいない空
いつかの空
どこに隠れたんだ
キミは





自由詩 運動会の、空へ Copyright yo-yo 2005-10-10 06:20:37
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