グレープフルーツ
望月 ゆき

2個で150円、
の うたい文句につられて買ったそれは
避暑地の出来事のように
ふわふわと軽く
わたしを照らし
黄色く、寄りそうのでした


夏の酸味と
ひとくち目の
甘い、甘い、感触で
ずぶずぶと入りこんでしまったのは
わたしの落度だったのでしょう
苦い経験というものは
たいてい
あとからやってきます


宙に浮かんだところで
満ちたり、欠けたり、
するわけでもないのでそれは
つなぐ手のなくなったわたしの右手で
ぐいぐいと搾られて
空気中に
ビタミンを散布しながら
枯れてゆきます


寄りそうそれを眺めていると
酸性の涙が流れてきて
150円とひきかえに
世界はまた
地球温暖化に悩まされる日々です




自由詩 グレープフルーツ Copyright 望月 ゆき 2005-10-08 21:23:04
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