はぐれる空も、見送る人も
霜天

ひとりになる
そんなことは結局、どこにもないのかもしれない
はぐれがちになる秋の、空の一片は
また明日と手を振るように
ぽっかりと抜け落ちている

秋の
すっと高くなる人たちの
忘れられない声がする


見送りの列の、その先の人は
とても静かな声だった
誰にも
気付かれない足取りで
駆け抜けるように通り過ぎては
また明日と、そこに零していく
さあ、と勢いよく手を打つと
はぐれた空の辺りへ
辺りへ



そこからの景色は逃げていかないので
可能性と言い出せばどこにも行けないので
抜け落ちた空の懐かしさを語れば
言葉が形にならずに零れていってしまうので
行き止まりに佇んでしまう
それはきっと、いつものことで



この、足元には
何も変わらないということが
回転する夕暮れのように暖かいらしいので
私はここで、見送るだけにする

 ひとりになる
 そんなことは結局、どこにもないのかもしれない

また明日、と呼ぶ声に
また明日、と答える
それだけで回転するはずの世界に
少しくたびれた靴で、私も確かにそこに
いる


自由詩 はぐれる空も、見送る人も Copyright 霜天 2005-10-06 00:24:13
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