はぐれる空も、見送る人も
霜天
ひとりになる
そんなことは結局、どこにもないのかもしれない
はぐれがちになる秋の、空の一片は
また明日と手を振るように
ぽっかりと抜け落ちている
秋
秋の
すっと高くなる人たちの
忘れられない声がする
見送りの列の、その先の人は
とても静かな声だった
誰にも
気付かれない足取りで
駆け抜けるように通り過ぎては
また明日と、そこに零していく
さあ、と勢いよく手を打つと
はぐれた空の辺りへ
辺りへ
そこからの景色は逃げていかないので
可能性と言い出せばどこにも行けないので
抜け落ちた空の懐かしさを語れば
言葉が形にならずに零れていってしまうので
行き止まりに佇んでしまう
それはきっと、いつものことで
この、足元には
何も変わらないということが
回転する夕暮れのように暖かいらしいので
私はここで、見送るだけにする
ひとりになる
そんなことは結局、どこにもないのかもしれない
また明日、と呼ぶ声に
また明日、と答える
それだけで回転するはずの世界に
少しくたびれた靴で、私も確かにそこに
いる