砂嵐
千波 一也
夥
(
おびただ
)
しく降り注ぐのは
湿り気のある眼球たち
あまりにも優しい成分なので
それらは
容易
(
たやす
)
く踏み潰せてしまうのだが
悲鳴に私は恐怖する
オアシスはすぐ其処だ
通り過ぎて来ただけの街並みに似て
その向こうには蜃気楼
潤いを求める私にとって
意味をなさない
蜃気楼
眼球がいま、肩で砕けた
耳を塞ぎ忘れた私は
断末魔を聞いてしまった
何度目に
なるだろう
眼球の孕んでいた水分が肩に広がり始めている
太陽に見つかってはならない
乾くのだ
熱いのだ
潤いが奪われてゆくのだ
急がなくてはならない
私は走る
眼球たちの注ぎのなかをひた走る
オアシスはすぐ其処だ
けれど
私を迎えたものは
空から降り注ぐものたちの集落
水たまり、のようなもの
私は此処では潤えない
辺りに転がる
亡骸
(
なきがら
)
も
他人事ではなくなってきた
注ぎをやまぬ優しい成分たちに
何かを言いかけて
ジャリッと
私は
舌を噛んでしまった
自由詩
砂嵐
Copyright
千波 一也
2005-10-05 20:39:47
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