あいつ
FUBAR

あいつの枕元にあるメモ帳には
長々と 書いてある

誰であろうとも
また何人に
寄り掛かられようとも
自分自身は
寄り掛かる相手を
必要としない
そんな強い人間に
なりたい

あいつは常に
よい聞き手
仲間を気遣い
世話を焼き
優しく励まし
勇気づける

あいつは
誰もが認める強いやつ


あいつの枕元にあるメモ帳には
長々と 書いてある

たとえ自分の
心から愛する人が
私の方に
全く振り向いてくれなくても
どこか別の方を見ていようとも
私はその人の幸せを
心の底から祈ってあげたい
自分が愛する人には
誰よりも幸せに
なってほしいから

あいつの愛は
どう見ても 一方通行
報われることは
おそらく ない
完全な 完全な
時代おくれ

あいつは
自他共に認める強いやつ


あいつの枕元にあるメモ帳には
長々と 書いてある

他人から見て
自分の背負っているものが
どんなに大きくても
どんなに辛いものだとしても
私は常に
笑う者でありたい

あいつは決して
弱音を吐かない
どんな時でも
自分を信じる
不自然なくらい
前向き


あいつは誰もが認める強いやつ だった
あいつは自他共に認める強いやつ だった


あいつの枕元にあったメモ帳には
短く 書いてあった
しかも何故か英語で

Wish That I Could Cry
Fall Upon My Knee

誰もあいつの心を読み取れなかった
誰もあいつの心を見破れなかった
誰もあいつの悩みに気がつけなかった
誰もあいつの苦しみに気がつけなかった

ちゃんとサインを
出していたのに


そう あいつは
誰もが認めた強いやつ
自他共に認めた強いやつ


誰もが認めた強いあいつ には
自他共に認めた強いあいつ には

もう 会えない


自由詩 あいつ Copyright FUBAR 2005-10-05 15:25:21
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