映日果(イチジク)
こしごえ
イチジクを手にとる
あなたの背中を思い出す
いつかの電車内で振った
人体骨格のねじれた手首に
無邪気な笑顔でこたえた少女
そこにみだらな星はなく
鮮烈なスタッカートが鳴り響いていたのです
あなたの静かな背中と
そよ風の甘さとが重なる
(イチジクって花をつけないのよ。
だから漢字で無い花の果実の果って書くの)
少女が血を流す新月
実りを願う風祭
知らなかったのですね
イチジクは
内面に無数の花を
つけるのですよ?
ちらつくイノセンス
いまと甦る
あなたがわたしを生んだ
そう
あともどりのできない空
遠雷に
小刻みにふるえる映日果