椋鳥
あおば


タケヤガヤケタ!
新聞紙をひろげたら
焼けたのは竹野の外れ

焼け爛れたタイヤが燻り
きつい硫黄の匂いが林の
中にしつこく漂っている台所で
焦がしてこびり付いた黒こげの
手鍋の底を見つめ口惜しがる私
無理して削ぎ落とし傷付け穴開
けるよりは綺麗に洗い使い続け
る方がよいのだがそれでは潔癖
な妻子は嫌がるだろうと懐に隠
し持って散歩の途中で
竹屋の裏の竹林の中に
黙って不法投棄したら

竹の幹に当たってカン
負けずに鍋の柄がコン
カンコンカンコン鳴り響き
大人しい椋鳥たちを驚かし
一斉に羽ばたいて
怖いくらい

貴様はなにか
怖いのか暗いのか
上級生に胸ぐら掴まれ
くらいのくらいのくらいの

3度返答したところ
返答する未来は無いと
同級生の生々しい言葉に
黙ってうなだれる中学生は

コワイという涙声

そんなにコワイか
なにがコワイかを
具体的に言ってみろ

下士官の冷たい声に

通りかかったアイスキャンデー屋を呼び止めて若い女の働く温泉宿で囓るために買い求めたこちんこちんの小豆色のを手にぶら下げて佇んでいる年老いた男の
具体的な声は意味を失い
呆然としたのだが
ぼうぜんとした声というのは
抑揚が明確でなく
記録しにくいのですが
ここに来たついでですから
タケノコを戴いてゆきますと
初年兵が半長靴で蹴飛ばす途端

バッバッバッバッと凄い音
古臭い2サイクルエンジンが回りだす
喧しい竹ずっぽうの弾ける音が
タケバヤシに鳴り響き
マフラーを外した
近未来型の
2サイクルマシンに跨った
禿頭の中学生たちは
一斉に飛び出してゆく

うるさいよと
腹立ち紛れに小石を投げたら
竹の幹にあたってカン
跳ね返ってコン
カンコンカンコンなりひびき
大人しい椋鳥たちが跳ね起きて
一斉に羽ばたいて
怖いくらい






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作 2003.03.30



自由詩 椋鳥 Copyright あおば 2005-10-05 01:28:59
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