鹿と女
紫乃

鹿になりたや
そして逃げたや
小さな紅葉の降る頃に
紅いその葉をなお紅く

鹿になりたや
そして逢いたや
いつかの昔にかいまみた
綺麗なひとみの山のひと

鹿になりたや
そして越えたや
遠く聞こえた潮騒の
引き去る波のその先へ

鹿になりたや
そして死にたや
生まれたその日と同じ秋
小さな嵐にあやされて

鹿になりたや
そして消えたや
綺麗な月の照る夜に
餅つく兎に笑われて


自由詩 鹿と女 Copyright 紫乃 2005-10-04 23:42:33
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