仕事
Monk


ツリーのてっぺんの星を100万個にひとつ、ほんとうに願いがかなうものに取りかえる仕事です。


王子様の先回りをして解毒剤を吹き矢で姫の首筋に突き刺す仕事です。


日々の生活のアクセントとして、48時間のタイムリミットを設定する仕事です。


詩人などろくでもない奴なんだと吹聴して、1杯150円のコーヒーをどうどうと値切る仕事です。


ピーマンぎらいの子供たちに、ハンバーグに仕掛けられたみじん切りピーマンを警告してまわる仕事です。


大きな壷で混ぜられた魔女の秘薬の原料を自慢の味覚で言い当てたなら、たとえカエルになってもかまわない仕事です。


冬の星空を賛美するために自動車の屋根を夜ごとノコギリでひっぺがす仕事です。


ガラスのかけらで育てた花をひとりぐらしのベランダに敷きつめる仕事です。


鳴らない電話と冷めたコーヒーを比較し、その将来性を数値化する仕事です。


1000枚のラブレターを焼き払った炎で新巻ジャケをまるごと一本ホイル焼にする仕事です。


失ってから気づく愛情の大きさを測るための新たな単位を学会に発表する仕事です。


あたたかいスープのお皿をひっくり返そうともくろむ、ねこぜの超能力者と町外れで決闘する仕事です。


ベルトコンベヤーに乗ってやってくる記憶の断片を組み合せ、まだ見ぬ宝のありかを大きな模造紙一面に書き記す仕事です。


血で血を洗う争いの最中ひとり皿を洗いながらふきだす仕事です。


チョウを追いかける少女を追いかける母の不安を追いかけて行き着いた日本海の厳しさを教える仕事です。


三日で終わった日記帳を集めて作った一ヶ月分の日記帳を、夏休み最後の日に小学生に売りつける仕事です。


生まれてからのあらゆる悲しみを使って涙の吸収性抜群の枕を開発する仕事です。


時計を分解してもういなくなった恋人の忘れ物を探しだす仕事です。


スイッチを「押さない」仕事です。


虹のふもとにたどりつくために船員として船の台所でじゃがいもをむきつづける仕事です。


ビルの屋上から飛ばした紙飛行機があのコの家の窓に飛び込むまで監視する仕事です。


夜中にコピー機と語り合い自伝にまとめたものをホッチキスでとめる仕事です。


ゴールネットの裏で湯を沸かし、ゴールキーパーの苦労をねぎらう仕事です。


すみやかに下校しない生徒達を人体模型と二人三脚で追い回す仕事です。


従業員達の見守るなか売れ残ったショートケーキの上を反復横跳びで迅速かつ巧妙にまたぎ飛ぶ仕事です。




自由詩 仕事 Copyright Monk 2005-10-04 01:24:27
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