かたひざ
なつ

すこしだけ
ひざを抱えさせて、という。

たぶん
うつむいた想いと
ゆっくりと進行するあきらめ、と
降りだす直前の雲のようなさみしさ
お気に入りだった音楽や
冷めたカフェオレ、二人乗り
いろんなものが
ひざこぞうに集まっている。
そのひとつひとつに
名前を付けておきたいとも思うし
そっと燃やし尽くしたい、とも。

座布団が秋のにおい
たくさんのものが
涼しくなってゆくんだね。

そのうち、スプーンの奥には
ちいさな種がまかれて
青白く、青白く、燃えはじめる。
右ひざから
あたたまった
カフェオレがこぼれだすころには
足首までぬれているし
やがて、肩まで泣きそうになる。


自由詩 かたひざ Copyright なつ 2005-10-01 21:57:35
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